留学体験談

伴奏者として、歌曲の素晴らしさを伝えたい

植野 萌雅 様 Moeka UENO

東京都立総合芸術高等学校卒業後渡仏。現在パリ地方音楽院でピアノソロをBilly EIDI(ビリー・エイディ)先生のクラスに、パリ13区立音楽院でピアノ伴奏法をクロード・コレ(Claude COLLET)先生のクラスに在籍。

伴奏者には専門的な知識と技術の他に、幅広い教養と経験が求められます。伴奏法の授業では、あらゆる需要に応える技術を磨くために初見視奏、伴奏初見、スコアリーディング、鍵盤和声法など卒業試験に向けての準備の他、作曲科で勉強するような和声の進行方法や展開のさせ方なども学びます。また、ジャズ科の先生により時々行われるレッスンでは、ジャズのコードや即興を勉強しています。伴奏科の生徒は指揮科や声楽、器楽のクラスで伴奏をする機会が多くあるため、学んだことをすぐに実践することができます。伴奏を通して様々な音楽家と繋がることで、ソロの勉強だけでは得られない視点から音楽に取り組むことができるのが嬉しいです。

植野 萌雅 様
地方音楽院のエイディ先生からは、「伴奏者は、同時に良いピアニストであるべき。ソロの演奏レベルを上げると、伴奏者としての能力も上がるよ」と言われます。渡仏前に、ソロと伴奏法の両方を勉強するよう勧めてくださった先生には、とても感謝しています。レッスンでは、音楽を大きく捉えて流れが止まらないようにすることを重点的に指導してくださいます。

留学してから、これまで10か国を旅行しました。様々な国を訪れ、それぞれ全く異なった言語や文化を体感する度に、自然とその国の作品を演奏したくなります。リスト音楽院で行われる講習会に参加するために訪れたハンガリーでは、バルトークが採集した民謡やマジャール語に接する機会がありました。百聞は一見に如かずで、他のヨーロッパ諸国の作曲家のスタイルとは異なる独特なリズムや拍感、節回しなど、マジャール語の音律を実際に聞いて納得すると共に、音楽と言語の密接な拘わりについて再認識しました。

昨年末には、日本でラヴェルやアーンなどのフランス人作曲家の歌曲の他、アルマ・マーラー、ファニー・メンデルスゾーン、クララ・シューマン、リリ・ブーランジェなど女性作曲家を中心に声楽のコンサートを主催しました。今年は、3月にパリでフルート、クラリネットとのコンサートの他、夏には日本で歌曲のコンサートを予定しています。あまり知られていない素晴らしい作品を集めて紹介し、クラシック音楽に馴染みのない人々にも歌曲の良さを味わっていただけたらと考えています。

音楽の勉強には限界がありません。常に向上心と好奇心を持ち、専門分野以外のことから学んだことや、様々な経験を演奏に反映させ、どのようなジャンルやスタイルの音楽にも対応できる伴奏家になりたいと思っています。