留学体験談

プロとしてのヴァイオリン奏者を目指して

肝付 黎 様 Rei KIMOTSUKI

桐朋学園大学を卒業後、リヨン国立高等音楽院第2課程に合格。現在マリー・シャルヴェ(Marie CHARVET)先生クラスに在籍。

マスター2年目は生活面・音楽面どちらにおいても変化のある年でした。
昨年は学校・フランスでの生活に慣れるのにやっとで毎日があっという間でしたが、今年は生活リズムも安定し少し余裕ができたのでフランス語の勉強にも積極的に取り組んでいます。

そのきっかけは、ある日教授から『あなたは練習量と練習成果が釣り合っていない。社会に出たら一日の大半を自分の練習に費やせないのだから、短時間で効果を出せるよう目標を立てて、時間内で終わるよう改善していくこと。頭を使った練習をするのは5時間、それ以降はただの運動になっていると思いなさい。』と指摘をされたことです。

今までは、“日中は学校と食事以外はとにかく練習”だったのですが、アドバイス通り練習内容を見直し、午前中5時間の練習をして学校へ行き、帰宅後はフランス語や卒業論文の作成に取り組むように変えました。これができるようになったのも練習に関する考え方を大きく変えたことで、時間と心の余裕を持てるようになったからだと思います。

学校でのレッスンでは二人のアシスタントの先生からそれぞれレッスンを受けられます。去年は、音階や音程などテクニックなどにおける私の問題点を根本的に指摘してくださる先生、今年は楽譜の音から広がるイメージや音色をとてもわかりやすいフランス語で説明してくださる先生でした。教授から指摘されたことを家に持ち帰り、解決策が見えない場合でもアシスタントの先生と一緒に解決策を考える機会があり、さまざまなフランス語の表現で伝えていただけるので、とても重要なものとなっています。

また、授業の一環として年に一度、リヨン国立管弦楽団と共演する機会が与えられます。去年はセカンドヴァイオリンでしたが今年はファーストヴァイオリンとして参加させて頂きました。学校内のオーケストラとは違い、本番まで数回のリハーサル及びゲネプロしか無い中で、どのように楽譜を読み、本番に挑むかを直に学ぶことができる貴重な時間となっています。

さらに2年生からは卒業最重要項目である論文制作が始まります。最終締切までに数回の論文授業やオリエンテーションが組み込まれています。内容は最低執筆30ページ、9月にはその半分を提出、2月までに本提出となり、4月には試験官の前でプレゼンテーションや質疑応答を行う最終審査があります。しかも同時期に学校主催によるソロリサイタルや室内楽やリサイタル形式の卒業試験も組み込まれています。

学校外ではオルガニストの方から依頼されクリスマスのミサに初めて参加しました。二日間計5回のミサで演奏し、ヨーロッパではクラシック音楽がいかに生活に浸透しているのかということを肌で感じた貴重な経験でした。
今年7月には完全帰国する予定です。帰国後は、今まで先生方から教わったこと、音楽の喜びを多くの人に伝えていけたらと思っています。