留学体験談

フランスのその先へ

多久島 茜音 様 Akane TAKUSHIMA

上野学園大学1年次に渡仏し、エコール・ノルマル音楽院にてブルーノ・リグット(Bruno RIGUTTO)先生に2年間師事。 2015年パリ国立高等音楽院に合格。1年間ミシェル・ベロフ(Michel BEROFF)先生に師事した後、現在フローラン・ボファール(Florent BOFFARD)先生のクラスに在籍。

フランスのその先へ

 2017年は、夏に東京で二度のソロリサイタルを開催したほか、室内楽での活動を精力的に行った年でした。12月にはフランスからヴァイオリン、ビオラ、クラリネットをそれぞれ専門とする3名の仲間を招き、宮崎と東京で室内楽のコンサートを開催しました。そこでは、ミヨーの「組曲」、シューマンの「おとぎ話」、クラークの「ドゥムカ」、プーランクの「クラリネットとピアノのためのソナタ」など、日本ではあまり聴く機会のない作品を演奏しました。作品ごとにトリオやデュオなど楽器編成が替わる公演は、視覚的にも面白いプログラムだったと好評をいただきました。
 2018年は、6月に控えている国立高等音楽院の卒業試験に先立ち、4月15日に東京でのリサイタルを予定しています。また、夏にはデュオでコンサートをしたいと思っています。

 学士の卒業に必要な単位は1年生の間で取り終わり、今年は13区立音楽院のクロード・コレ(Claude COLLET)先生のクラスで、ピアノ伴奏法も学んでいます。国立高等音楽院の卒業試験では、これまで学んできたクラシック音楽に加えて、現在師事しているボファール先生が得意とされている現代音楽もプログラムに組み込む予定です。
卒業後は、先生からの勧めもあり、修士課程に籍を置きつつ、ヨーロッパ内の交換留学システム「エラスムス」を利用して、フランス以外の国で1年間研鑽を積むつもりです。

 パリでは、コンサート、オペラ、バレエの公演など、一流の芸術に触れるチャンスが多く、クラシック音楽の勉強にとっては大変すばらしい環境です。その一方で、5年目になっても、学生ビザの更新をはじめとした行政手続の煩雑さや、音楽院の事務との意思疎通にはまだまだ振り回されることが多いです。
またパリはヨーロッパ各国のアクセスが良く、数時間で国境を越えて、気軽に異なる文化や言語に触れることができます。昨年は、講習会やコンクールの折に、バルセロナやミラノ近郊の小さな村を訪れて現地の人々と交流する機会に恵まれました。また、復活祭のバカンス中には、ふと思い立ってアルザス地方の町コルマールまで日帰りで足を延ばしました。ドイツに近いこの地方にはドイツ語話者が多く、パリとは異なる街並みや人々の気質がとても新鮮でした。

 今年は、交換留学を生かして視野を広げ、豊かな感性を養っていきたいと思います。そして、これまで培ってきた、「表現者として自分が感じるものを発信し続け、共演者や聴き手とのコミュニケーションを大切にする」という姿勢を磨き、音楽家としてさらに成長したいと思っています。