留学体験談

専門分野を多方面から学べたフランス留学

肝付 黎 様 Rei KIMOTSUKI

桐朋学園大学卒業後、リヨン国立高等音楽院第2課程に合格。マリー・シャルヴェ(Marie CHARBET)先生クラスに在籍し、Diplôme de 2e cycle supérieur, conférant le grande de Master取得。2018年6月帰国。

印象的だったフランスのアナリーゼ学習法

 CSMDLのマスターでは芸術音楽の講義と応用和声(主にアナリーゼ)、そして英語が必修でした。
アナリーゼに関しては、マスターからの入学だったこともあり、導入和声を受けずにダイレクトにアナリーゼのクラスを受講しなければならなかったので、クラスの授業についていくためにフランスで使われている楽典の本や和声、アナリーゼの教材を自分で一から学習する必要がありました。アナリーゼでもっとも印象的だったのは、フランスでは楽譜に書かれた音符を理論的に分析するだけでは不十分で、分析から導き出された理論が意味する音楽的意義を自分なりの解釈で言葉にしなければならないという点です。そこで初めて、机上での分析を実際の楽器を用いての演奏に生かし、結び付けて行くことができるのだということを学びました。

論文提出の数日後がリサイタル!!

 在学中、数多くオーケストラに乗る機会がありましたが、中でも最も印象的だったのはリヨン国立管弦楽団との演奏会です。年に1度の演奏会なのですが、私は幸いにも二年間続けて参加することができました。プルトごとにCNSMDLの学生と団員が隣同士になるように組まれているので、いつものオーケストラ授業とは違う緊張感の中、プロの姿勢やテクニック、指付けなどを直に学ぶことができる本当に貴重な機会でした。
またマスター2年目には、リサイタル形式の卒業試験とは別に、学内もしくは学外でリサイタルを行うことになっています。私の場合は、ちょうど論文提出の数日後がリサイタルという日程で、なかなかハードではありましたが、二年間の集大成としてとてもいい経験になりました。

交通機関があるのに毎日4キロ歩く日々…

 フランス生活では、公共交通機関の信頼度がとても低いことに最初は戸惑いを感じていました。私のアシスタントの先生が「フランスで3回続けて電車が時間通りに来たらそれは奇跡だ」とおっしゃっていましたが、とにかく、時間通り、予定通りに事が進まない。
結局2年間、片道2キロ毎日徒歩で学校まで通っていました。
また、勤労感謝の日にはすべての公共交通手段もお休みになるということです。この日はもちろん学校も休みで、久しぶりに友人と出かける約束をしてとてもワクワクしていたのですが、出かける直前に乗換案内を見て愕然、「今日は終日運行しません」の文字が。せめて、全自動運転のメトロくらい動いていてもいいじゃないかと思いましたが、よく考えたら清掃員を始め、駅員は人間なのでお休みで当然です。

帰国後、当たり前だった生活を変えてみる

 帰国して1年弱、フランスでの音楽生活の密度が本当に濃かったので、帰国後は一時的に音楽から離れてみることにしました。
私はこれまで、音楽の中で生活することが当たり前でしたが、一度音楽から離れて全く違う世界で仕事をすることは、音楽というもの、楽器を演奏するという環境を外から見られる貴重な機会でした。私は、音楽の存在は人々の心を豊かにしてくれると考えます。今、日本に必要なものは、音楽を高貴な芸術と一括りに考えてしまう価値観の払拭とその機会であると考えます。芸術こそが、これからの混沌とした時代に一筋の光を差すものと信じ、その一翼を担えるようになることが今の目標です。

留学生活は人生でかけがえのない宝物

 フランス留学は、専門分野をより多方面から、そしてその専門分野を超えて様々なことを学ぶことができます。もちろん、苦労することも少なからずありますが、みなさんのサポートをお借りして、それらを乗り越えた時には必ず人生でかけがえのない宝物になっています。
みなさんのフランス留学を、心から応援しています!