留学体験談

日々の経験がピアノの演奏にも活かされている。

佐々木 梨央 様 Rio SASAKI

国立音楽大学附属高等学校卒業後、同大学2年時に渡仏。 パリ地方音楽院にてユーグ・ルクレール(Hugues LECLERE)先生クラスに在籍しDEM(Diplôme d’Etudes Musicales)取得。ヴェルサイユ地方音楽院最上級Perfectionnement課程にてフランソワ・シャプラン(François CHAPLIN)先生クラスでディプロマ取得後、現在同音楽院リソンス(学士)コースに在籍。

留学5年目、新しいステージへ

 昨年ヴェルサイユ国立地方音楽院にて最上級Perfectionnement課程を修了し、無事ディプロムを取得する事が出来ました。しかし、まだChaplin先生のご指導を受けたいと考え、2018年秋からはヴェルサイユ国立地方音楽院のLicense (学士)課程で勉強しています。実技レッスンに加えて週に4日の音楽院での授業と週に一度はヴェルサイユ大学で講義を受けています。大学では前期はフランス文学史を、後期は近代史を選択しました。もちろん全てフランス語で行われる普通の大学の授業ですので、留学5年目となりましたが、授業についてゆくのはなかなか大変です。

「ヴェルサイユ」と言う歴史ある土地ならではの授業構成

 音楽院での授業は日本の音大と同じ様に基礎声楽や音楽史、室内楽などがあり、他には即興、副科楽器、solfège ancienというネウマ譜を読み解く授業や、16世紀までの音楽に触れる授業があります。室内楽ではブラームスのピアノトリオに取り組んでいて、音楽院での演奏の機会もいただきました。そして副科楽器として取っているクラヴサンの授業は大御所のブランディンヌ・ラヌー(Blandine Rannou)先生のご指導です。毎週30分と短い時間ですがとても充実した濃いレッスン内容でバロック音楽とさらに深く触れあえる素敵な時間になっています。授業全般に言える特徴としては、ヴェルサイユと言う歴史ある土地の影響でしょうか、バロックやそれ以前の時代をリスペクトした授業構成になっているように感じます。

忘れられない様々な場所での演奏機会

 また昨年の夏は渡仏してから一番忙しく楽しく、充実した一か月となりました。Nancyphohies(音楽フェスティバル) に招待されリサイタルを行う事が来ました。またリサイタルに先立ち行われたペピニエール公園の野外音楽堂には大勢の人々が来てくださり真剣に耳を傾けてくれた姿に感動しました。ナンシーの他にもディナール国際音楽祭でマスタークラス修了コンサートの出演者の一人として選ばれました。
ディナールはイギリス文化の色濃い街としてノスタルジックな風景が今も残されていてエメラルドに輝く海は本当に美しく、街をあげての音楽祭に参加できた事は忘れられない思い出です。

日々の経験がピアノの演奏にも活かされる

 留学当初はほぼピアノと向き合うのみで過ぎていたように感じていましたが、リソンス課程に進学後は新たな大学での学びの機会も得、更にはフランス人だけでなく様々な国籍の人と出会い一緒に演奏する機会もいただき、今まで以上にフランスという国に溶け込めているように思います。毎日忙しくあっという間に過ぎて行く中でも日々の経験がピアノの演奏にも少しずつ活かされていると感じています。

私だけの音色を求めて…

 今年で3年目を迎えたChaplin先生のクラスでは、音楽性だけではなく、お人柄やレッスンの中でのお話など一つ一つ全てを吸収し先生のご指導に応えたい、少しでも近づきたいと考えています。先生は第一関節で音色を作るという事をとても大事にされていて、私も少しずつ音色やバランスの種類を増やしているところです。先生の演奏会で、モーツァルトのピアノ協奏曲を聴ける機会があったのですが、音の透明感、バランス、間の取り方、すべて素晴らしく、先生の下で勉強できる幸せを改めて実感しました。これからも私だけの音色を求めて努力していきたいと思っています。