留学体験談

外国人の私がクラッシック音楽の文化で大事なことは「生活すること」

友光 曜子 様 Yoko TOMOMITSU

聖徳大学大学院音楽文化研究科卒。卒業後ボーカルスクールにて後進の指導にあたる。2016年に参加したミュージック・アルプ・ティーニュ国際音楽アカデミーでペギー・ブーヴレ(Peggy BOUVRET)先生のクラス受講がきっかけとなり、2018年渡仏。スコラカントルム音楽院在籍。

スキルアップ・キャリアアップを図る留学

スキルアップ・キャリアアップを図る留学

日本で音楽学部のある大学と大学院を修了し、オペラの研修所に通いながらフランス歌曲の勉強を続けていました。段々と歌の仕事が増え、現場に立つことで様々なことを学び自分の長所を自覚する一方、自分に足りないものも浮き彫りになっていきました。本番を重ねる毎に自分の成長を感じつつ、行き詰っている感覚もあったのです。大学の名前で有名音楽大学出身者と比べられる経験もありました。「このまま自分を放っておいてはいけない」と漠然と感じつつ日々の生活、本番や稽古に追われる中、二年前に受講したフランスでの音楽アカデミーのことが頭から離れませんでした。そこで出会った素晴らしい先生から得たテクニックと音楽性。そして歌曲の色彩感覚や詩の深い理解に不可欠な語学力、フランスの文化や空気感に触れる経験、「留学した」という経歴。私に今必要なものはハッキリしており、そしてそれらがフランスにあるという事を確信していました。スキルアップは勿論のことキャリアアップを図るためにも私は留学を決め、幸運にも多くの状況がそれを許してくれました。私はフランスで学生生活を再開し、自分の成長のために多くの時間を使えるという事がこんなに幸せだったか、と痛感しました。

安定した精神状態を保つには…

7月に渡仏し、2か月間語学学校に通いました。独学で文法の知識はある程度あったものの、聞く・話すという基本的なコミュニケーションが取れなかった私はこの2か月間でその二点を中心に勉強をしました。そして語学力を高めるために、よりこの国の文化に触れるために、住んでいる寮の近くのバル兼ブラッスリーに毎日通いました。ここで毎日誰かと話し触れ合うことで多くのことを学びつつ、「知り合いのいない場所での生活」という状況の中でも心の拠り所を作ることで安定した精神状態を保つことができました。音楽以外のリラックスした時間を持つことで音楽学校でのレッスンものびのびと受けられ、より開放的な音楽表現につながりました。また私が日本人的な内向性ゆえに自分の意見を主張しないせいで傷付くこともあり、その後その経験から声を荒げて言い合いをすることもありましたが、それもヨーロッパ人であるオペラの登場人物のキャラクターやメンタリティの理解につながりました。

音楽の勉強とは何か

私達は勉強のために留学しています。しかし音楽の勉強とは何か。レッスンを受けること、音楽の知識を得ること。それ以外に、クラシック音楽という文化の中で「外国人」である私達にとって大事な勉強は「生活すること」だと思います。歴史的な知識を得る以外に、私達の知らない「当たり前」を当たり前に過ごす事、それこそが文化に触れるという事なのではないでしょうか。それこそが日本では出来ない、留学でなければできない勉強なのではないでしょうか。
そんな事を思いつつ、いつものバルで仲の良い常連達に邪魔をされながらこの文章を書きました。