留学体験談

音楽と共に歩む幸せ

松﨑 佑美 様 Yumi MATSUZAKI

桐朋学園大学卒業後、2016年渡仏。現在パリ地方音楽院でジャン=マリー・コテ(Jean-Marie COTTET)先生のクラスに在籍。

フランス音楽が好きで、留学をするならフランスと考えていました。パリに旅行した際、友人を通してコテ先生のレッスンを聴講し、先生の人柄や丁寧な指導法に触れて、ぜひ先生と勉強したいと思い留学を決意しました。渡仏前は、語学を始め様々なことに不安を感じていましたが、実際に現地に来てみて、周りはすべてフランス語という環境に身を置き、日常的にフランス語を耳にするのが上達の一番の近道だと実感しています。

先生は、常に次の小節を意識して演奏する習慣をつけることや、手のポジションの大切さ、また求める音色によって手首の使い方を変えることなどを分かりやすく指導してくださいます。毎回のレッスンには、一人の演奏者として臨むことを心掛けています。新しい曲を勉強し始める時には、最適な運指法やフレーズの捉え方など、常に弾き易い方法を自発的に考える習慣をつけるようにしています。

また、ペダルリングについても研究し、論理的にペダルを使うことを改めて意識するようになりました。先生がレッスンで実際に弾いてくださる際には、できるだけたくさんのことを吸収できるよう、細心の注意を払って聴くようにしています。先生の演奏は呼吸をするように自然で、コンサートでは音楽をすることの楽しさが伝わってきます。

パリ6区立音楽院では、コテ先生のピアノ伴奏法のクラスで初見視奏の他、移調、四重奏のスコアリーディングなどを学んでいます。現代音楽に詳しい先生が難解な作品でも瞬時に構造を理解して演奏されるのを見て、いつも感銘を受けています。また、室内楽や伴奏にも積極的に取り組んでいます。昨年は4人の友人とジャズ風の曲を勉強し、カフェや区役所でコンサートをした他、ヴァイオリンとのデュオでは即興でダンサーが振りを付け、野外でのコンサートに参加しました。今年は3つのアンサンブルを組んでいますが、どれも編成が珍しく、出会ったことのない曲に取り組める機会が多いのは貴重な経験だと思っています。また、ドビュッシー没後100年ということで開催される学内のコンサートでは、連弾の曲も演奏する予定です。

フランス音楽を勉強したりコンサートで聴いたりする機会が増えるにつれ、この国で生まれた音楽を理屈ではなく肌で感じられるようになってきました。独特の洒落た響きやリズムをどう表現するべきか模索していますが、テンポを崩さず弾くということはとても重要なヒントなのではないか、と考えるようになりました。

勉強の合間には、学生は入場無料になる美術館を訪れたり、安価な当日券でコンサートに足を運んだりすることが多いです。思い立った時に一流の芸術に触れることができる環境で音楽を学べる幸せを噛みしめています。人と比べて焦らずにマイペースで勉強していくうちに、いつの間にかキャパシティが増えたことを感じています。一生をかけて、音楽だけでなく、人間としても豊かに成長できるような音楽家でありたいと思います。