留学体験談

書法を通じて改めて知る、作曲家の偉大さ

中安義雄 様 Yoshio NAKAYASU

国立音楽大学作曲科卒業後渡仏。スコラ・カントルム音楽院でレミ・ギヤール(Rémi GUILLARD)先生のクラスで学び、審査員満場一致の最優秀でディプロムを取得。2014年よりパリ国立高等音楽院エクリチュール科に在籍。現在、Thierry ESCAICH (ティエリー・エスケシュ)先生とDavid LESZCZYNSKI(ダヴィッド・レジンスキ)先生に師事。

パリ国立高等音楽院では、すでに実技以外で現在取得できる単位をすべて取ったため、今年は、「フーガと形式」のクラスのみを受講しています。レッスンは6人制で、午前中はフーガ、午後はソナタ形式の研究、と丸1日かかるため体力勝負です。全員が同じ主題を基に、それぞれ教授にアドバイスをもらいながら作品を創りあげる過程で、自分とは違う展開のさせ方や和声の使い方を聴くのは、とても新鮮で勉強になります。2人の教授のうちエスケシュ先生は、フランス留学を熱心に勧めてくださった日本の音大の恩師が、パリ国立高等音楽院留学中に師事した方だということが判明し、不思議なご縁を感じています。

学年末試験は二種類あり、一つ目は与えられた4~5小節の主題を、ベートーヴェンか、ブラームス、バルトークの作曲様式の中から各自選び、6週間でソナタ形式の作品にして提出、もう一つは音楽院の一室に籠って、フーガの課題を17時間で仕上げます。現在は試験に備えるため、バッハの『平均率クラヴィーア曲集』を参考にフーガを勉強し、ソナタは様々な作曲家の技法の特徴を研究しています。

最近はブラームスの作品を研究し、改めて彼の作曲技法のすごさに感嘆しています。特に展開部の発展のさせ方が素晴らしく、ヴァイオリンとピアノのためのソナタでは、わずか2つのモチーフを縮小させたり転調させたりし、クラリネット五重奏では少ないモチーフを楽器の組み合わせを変えるなど、発展の方法が和声的にも対位法的にも大変興味深いです。

大学生の時にバーバーの歌曲を演奏して、その素晴らしさに目覚めて以来、歌曲の作曲は自分の中で特別な位置を占めています。歌詞を通して、表現したいことが伝え易いということが理由の一つです。特に、日本歌曲を創りたいという意識が常に自分の中にあり、折に触れて歌曲にできそうな詩や俳句を選んでいます。中でも女性詩人の石垣りんさんの詩が好きで、朗読のCDをよく聴いています。一方で、本来朗読されるために書かれた詩を声楽曲にする難しさも感じています。自分なりの詩の解釈で音楽を付けてよいものか悩むことも多く、ドイツ語の韻律に巧く音楽を付けて素晴らしい歌曲を多数残したシューマンのように、いかに詩の深い意味を的確に捉え、音楽によってその美しさを引き出すかを模索しています。

今年は、7月に日仏文化協会汐留ホールのJeudi Soirコンサートにフランス留学中の仲間と出演し、フルート、声楽、クラリネット、ピアノでフランスとドイツの作品を演奏します。終演後には、お越し下さった方々と一緒にフランスのお茶やお菓子を楽しむティータイムを予定しており、アットホームな雰囲気の中で音楽を楽しんでいただきたいと思っています。